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地銀の機能不全を警戒した金融庁が、令和元年度「金融行政方針」を発表

金融庁は8月28日、1年間(2019年7月~2020年6月)の同庁の方針である「金融行政方針」を発表した。同方針では、人口減少等から今後見込まれる地方の衰退を懸念し、地方創生の担い手としてかかせない地銀の経営改革が待ったなしということを強調するものに。

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仮想通貨、流出ネムは、やはりマネーロンダリングされている!?

注目記事

仮想通貨:流出ネム全額を交換か 資金洗浄が完了? - 毎日新聞

 

記事のポイント

  • 仮想通貨「NEM(ネム)」約580億円分が仮想通貨交換業者コインチェックから流出した事件。

  • 犯人が、流出したネムの全てを既に他の仮想通貨に交換した疑い。

  • 専門家は、犯人側のマネーロンダリング資金洗浄)が完了したとみている。

  • 他の仮想通貨への交換に「ダークウェブ」を通じて行われたとみられる。
  • 犯人が手にした資金が、今後テロに使われる可能性も。
  • ネム財団による追跡は、資金洗浄を防げなかった。悔やまれるのは、取引記録を流出前の状態に戻す「ハードウォーク」が必要だった。

 

 

金融庁、仮想通貨交換業者へ立入検査を実施

仮想通貨交換業者・コインチェックから仮想通貨が流出したことを受けて、金融庁は、仮想通貨交換業者への検査を実施している。

金融庁総務企画局の佐々木総括審議官は、「新しい分野ほど、リスクへの感度が低い一方でリスクは高い」と話し、仮想通貨業界のマネロン対策の底上げが必要だとしている。

 

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仮想通貨を使ったマネーロンダリング

次の記事が詳しいです。

  • 20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議では、仮想通貨を使ったマネーロンダリング資金洗浄)の対策強化について議論。
  • 規制が緩い国が一つでもあれば“抜け道”になりかねない。
  • 仮想通貨であろうがなかろうが、マネロン対策で一番重要なのは、本人確認。
  • 日本はすでに平成29年4月に資金決済法を改正し、仮想通貨交換業者を登録制とし、本人確認を義務化。
  • 新興国には、未だ本人確認を必要としない交換所が多く、すぐには対応が困難。後ろ向きな国も。
  • 各国で本人確認を導入したとしても、その質が課題。偽造した身分証で簡単に口座が作れるようではダメ。
  • 捜査機関同士の連携も重要。
  • 本来、仮想通貨は資金の流れが明確にわかるため、マネロンに適さない。本人確認が各国で強化されれば犯罪に使われるケースは少なくなる、との専門家の声も。

 

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【G20】仮想通貨でマネーロンダリング、“抜け道”塞げるか 各国の協調が課題 - SankeiBiz(サンケイビズ)

かぼちゃの馬車問題、スルガ銀行は、本当に顧客本位の営業を行っていたのか?

 

記事のポイント

スマートデイズは今年1月、オーナーへの賃貸料の支払いを停止した。このため、銀行への融資の返済ができずに、破綻に追い込まれる「かぼちゃの馬車」オーナーが続出する懸念。

ハイリスク層向けに融資していた、スルガ銀行が貸倒れによって多額の不良債権を抱える可能性が高くなった。

既に、金融庁は、スルガ銀行に対し銀行法第24条に基づく報告徴求命令を出しているという。

また、オーナー達は「スマートデイズ被害者の会」は、スルガ銀行に対し集団訴訟を検討中という。

(記事:異質な銀行:スルガ銀行の危機…「かぼちゃの馬車」向け融資を独占 | ビジネスジャーナル

 

メインバンクは、スルガ銀行

そもそも、かぼちゃの馬車オーナーに対する銀行の融資審査やリスク管理はどうなっていたのか?

マイナス金利下、それに、企業融資がなかなか伸びないこともあって、収益確保のあまり、融資量の確保に走ったと思われているようです。

 

話題の舞台となった銀行の名は、スルガ銀行

静岡県沼津市に本店を置く地方銀行で、静岡県静岡銀行、神奈川県の横浜銀行に挟まれたエリアで営業をすることを基本としていますが、実店舗は五大都市圏において展開しています。

スルガ銀行は他の地銀に比べると、営業推進が他に比べ「異質」で有名です。特に、ネットバンキングでは早くから全国展開していることで、よく知られています。

ネットバンクや変わったローン商品のラインナップでもよく知られているが、その実現には、社長(当行は「頭取」ではない)の決断の速さでも知られています。

 

変わったローンとしては、一眼レフ購入ローンといったものもあり、あらゆる資金需要に対応しようとする、ある意味、金融庁の言う「顧客本位」の銀行なのかもしれない。 

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また、平成20年より、若い職員など勤続年数が短い会社員や、派遣の業務につく独身女性など、返済財源に懸念があるためリスクが高く、それまで金融機関が二の足を踏んでいたハイリスク層向けの住宅ローンを設計し、ゆうちょ銀行とスルガ銀行は提携する形で推進しています。

 

スルガ銀行は、顧客本位ともいえるが、なぜ、こうもリスクを顧みずに営業推進を行うのか。

 

それは、歴史的に地元の金融機関の競争が激しく、また、外に出ていこうにも、東は横浜銀行、西は静岡銀行に阻まれており、ビジネスモデルを構築するのに工夫が必要だったことが原因なのでしょうか。

 

もともと、静岡県は典型的なオーバーバンキング地区。平成14年に中部銀行が破綻しましたが、それでも、静岡銀行スルガ銀行清水銀行静岡中央銀行と4行もあり、しのぎを削っています。

 

 

かぼちゃの馬車のオーナー、危機に瀕す

芸能界に復帰したベッキーのCMでおなじみ、シェアハウス「かぼちゃの馬車」ですが、そのオーナー達は大変なことになっています。

 

 

かぼちゃの馬車のオーナーとは、その多くが普通のサラリーマンと言われています。彼らは、資産運用として老後の生活費の足し等などが目的で物件に投資をしてきたようです。

昨年10月に、同社はオーナーに対し家賃支払の減額を通知したばかりでしたが、今度はそれどころではなく、以後、まったく払えないと言ってきたのです。

 

ほとんどのオーナー達は、金融機関、特にスルガ銀行から1億円から3億円程度の多額の借金をして物件をスマートデイズから購入しており、毎月数十万〜百数十万円の返済を行う必要があります。物件からの収入がなければ、返済が滞ってしまうのは目に見えています。

 

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かぼちゃの馬車ビジネスの仕組みは?

「かぼちゃの馬車」はいわゆるシェアハウスの形態ですが、女性専用であることに特徴があります。また、個室(一棟あたり10〜20室程度)にはベッドや冷蔵庫、テレビなどが備え付けであることや、敷金礼金などの初期費用が1万円のみであること、共有のリビングスペースがないこと等が特長です。

個室の広さは概ね四畳半程度。

賃料は、光熱費を含む共益費+家賃+保険等で最低5万から最高で9万円くらいまでですが、日当たりのよさなど場所によって異なります。光熱費込みであることから、通常のワンルームを借りるよりも、多少割安と思われます。

間取りを見ると分かりますが、共有のリビングがないので、本当にシェアハウスかというところもあります。ただ、入居者同士のコミュニケーションは必要ないと思っている人には好都合でしょう。

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http://floaterswaltz.com/2018/02/12/kabochabasha/

 

スマートデイズ社によるビジネスモデルを簡単にすると、次のとおりです。

 

1.スマートデイズは、まず、自ら土地を取得しシェアハウスを建てる。

2.副業として、あるいは資産運用として不動産投資を考えているサラリーマン等に仲介業者を通じて、シェアハウス物件を販売する。

3.購入した顧客(多くはサラリーマン等)は、にわかに不動産オーナーになるが、その多くは不動産運用・管理のノウハウはない。

4.スマートデイズ社は、購入したい顧客に融資してくれる金融機関を紹介します。当該物件は、一棟当たり1億円以上するので、普通、サラリーマンは簡単に購入できない。だから、銀行からお金を借りて購入する。

 

サラリーマンは、通常、こんな多額な借金をしようと思わないでしょうし、銀行も貸さないでしょう。ところが、顧客がスマートデイズ社とサブリース契約をすれば、空室の有無の関わらず家賃として毎月60万円を保証してくれるというのです。

そして、その保証金額の中から、例えば45万円を銀行への返済に充てるということになっていたのです。

ところが、支払いはできないという、とんでもない状況に陥りました。

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http://floaterswaltz.com/2018/02/12/kabochabasha/

 

また、入居者の募集や不動産の管理業務はスマートデイズ社が代行してくれるというので、オーナーは不動産に全くの素人でも何とか投資ができるという、いわゆる「サブリース」の形態だったのです。

 

サブリースを中心とした金融機関のアパートローン問題については、相続税対策や超低金利を背景に富裕層などによる貸家の建設・取得需要が大きくなっています。一方で、人口・世帯数の減少が見込まれている中、将来的に空室率の上昇など供給過剰感が出始めています。

 

一般のサブリースでさえ供給過剰で、その収益について将来的に厳しいと思われている中、富裕層ではなく、その顧客の多くが普通のサラリーマンである「かぼちゃの馬車」の場合は、もっとリスクが高い取引であったのです。

そうした高リスク取引に、スルガ銀行は傾斜してしまった。今後、その多くが不良債権化してしまうかもしれません。

 

 

FSA金融庁的な見方

森長官は、持続可能な銀行のビジネスモデルとして、その模範生としてことあるごとに事例としていたのが「スルガ銀行」でした。

そのスルガ銀行は、不動産会社のスマートデイズが運営するシェアハウス「かぼちゃの馬車」の経営危機で、大きな信用リスクを負うこととなりました。

「かぼちゃの馬車」の実態は、入居率が5割を下回り、オーナーへの家賃保証を継続できる状況ではなく、平成30年年1月、スマートデイズは、とうとうオーナーへの賃貸料の支払いができなくなりました。

このため、このような破綻が予想されたビジネスモデルを推進させたスルガ銀行に対し、返済が困難となった「かぼちゃの馬車」のオーナー達の怒りが向かいつつあります。

オーナーらで構成する「スマートデイズ被害者の会」はスルガ銀行に対し、集団訴訟も辞さない構えだと報道されています。

果たして、ほめたたえた金融庁の森長官は間違っていたのか?

本当は、森長官には、ビジネスモデルの背景にある真の「信用リスク」に目を向けるべきであったのではないでしょうか。

だから、「この銀行の不動産ビジネスに対する融資はおもしろいし、当行のビジネスモデルも面白い。しかし、融資を委縮しない程度に、しっかり信用リスクを管理していくことは重要である。」などと、忠告しておいた方が良かったのかもしれません。

でも、収益を求めるビジネスモデルとリスク管理強化と、どうやってバランスを金融機関に取らせるかは、実際はすごく難しい。

ほんとは、金融庁にもよく分からないのかもしれません。